ミー

手から放す

2013年の秋、次男の薬物問題が起き突然、平穏だった日常が変わってしまいました。依存症という病気だなんて知る由もなく、「優しくてまじめな息子がなぜ??」私たちの育て方が悪かったのだろうか、私の何がよくなかったのかと自責の念に駆られ、苦悩する日々でした。

次第に壊れてゆく息子の姿に私たちはどうにもならなくなり、恥を忍んで熊本市の家族教室に行きました。そしてそこで熊本ダルクにたどり着きました。

田邊施設長さんから「とにかく家族は勉強してください。お母さんも病気です。」と言われ、なぜ私が病気?と受け入れる事が出来ませんでした。私は共依存という病気になっていることに気付きませんでした。

息子はますます薬物に依存していき、私は息子に依存して問題が大きくなりました。

とうとう、息子は危険ドラッグを使用後、事故を起こし私が最も恐れていた逮捕となり、それを回復のきっかけにしてほしいと願う私たちの気持ちもむなしく、家に帰ってからは自分の問題を否認し、鬱の状態で部屋に引きこもり、先の見えない苦しい日々が続きました。

息子が引きこもっている間も、対応の仕方を学ぶため、気持ちを楽にするために夫婦で熊本県や熊本市の家族教室、ダルクの家族会、医療機関、そしてナラノンに毎週通い続け、先行く仲間と分かち合う事で沢山の経験、力、希望を戴き、学ぶことにエネルギーを注ぎました。

息子にとらわれないように生活を続けていると、次第に夫婦二人で息子を気にしないで外出できるようになっていきました。

2016年4月・・・熊本地震が起き、自宅は半壊となり再建のめどもつかないで私たちが毎日、本当に大変だった時に息子は大麻所持で2度目の逮捕となりました。

リラプスも回復の一過程、とわかっていたものの私は心の中で『降参!』と叫びました。

自然災害に人間が無力であるように、親も息子の薬物問題には無力だと認める事が出来ました。

すぐに田邊施設長さんと恵さんに相談すると「今までと方法を変える事、手を放すチャンスですよ」とアドバイスを頂いたお陰で、留置所等の面会も行かず、手紙の返事も書かず、裁判の情状証人も引受人も断わり、2年前の逮捕の時とは全く違う方法で対応する事が出来ました。

一切世話を焼かなくなり、今までと態度が違う私たちに息子は苛立っていましたが、徐々に彼の気持ちが落ち着いた頃、私から手紙を初めて出しました。

『私たちは何もできないが、回復に対しては支援をしていくという事。息子の人生は息子に任せる、という事。あなたは私たちの大切な宝だから,何処にいても幸せを願っているという事。』

この手紙で息子の問題を息子に返し、私は愛を持って手を放す事がやっとできたのです。

そして、裁判が近づいてきたころ、ダルクで治療することを提案すると、釈放後そのままダルクに入寮することを、息子は自分で決めました。その後、服役中の手紙は、私たちは受け取れない、あなたはダルクにお世話になるのだからダルクに手紙を出しなさいと伝えていたのですが、手紙が自宅に届いたのです。

しかし、もう息子はダルクに委ねましたので、心を鬼にして、読めない理由を一言添え、封を切らず、そのまま息子に送り返しました。

勇気が必要でしたが手を放し続ける事で子供の生き方が変わると確信していたので、できた事だと思います。

現在32歳になった息子は関東のダルクに入寮して4カ月が過ぎました。今息子が同じプログラムを学び互いに回復を目指していることに心から感謝です。

病気の親の手で病気の子供を治療することは不可能です。ダルクという回復支援施設が存在するおかげで回復のレールに乗ることができました。

今から考えると心の痛みは体の痛みより辛く、心が痛ければ同じように痛み止めが必要で

生きづらさを抱えていた息子にとって、心の痛み止めというのは薬物だったのでしょう。

生き延びるために必要だったのかなと、今の私にはわかります。

いくつになっても子ども扱いして、一人の大人として尊重できず息子の自立の邪魔をしていました。

息子は自分の心や体を傷つけることで私たち夫婦に(生き方や考え方を変えて人として成長できる様)ダルクやナラノンという学びの場所を与えてくれたように感じています。

苦しかったあの頃に戻らない為には、完治はしない私の共依存が芽を出さないように、自分自身にだけ目を向け、学び続け、実践して行くことが私の役目だと思っています。息子のことはダルクで使わない生き方を仲間と共に学びとって、今日一日を積み重ねながら、新しい生き方ができますように、と祈ることしかできません。

親子で回復のスタートラインに立てたのは、田邊施設長さんと恵さんが常に寄り添い、時には厳しく的確なアドバイスを、していただいたお陰だと感謝しております。

また公的機関や医療の方々にいつも温かいご支援を戴き、そのおかげで平穏な日常を取り戻すことができ、有難く思っております。

ここに通えば何とかなる、と信じてナラノン、ダルクの家族会、家族教室に通い続けることで、第二の家族とも思える最高の仲間と最強のプログラムに出会い、人生を切り開くことができました。そのおかげで、今では夫婦で旅行したり、止めていた趣味をまた楽しんだり、辛い出来事も笑い飛ばせる自分がいます。

でも、長い旅は始まったばかり。お互い自立して大人同士の関係を作り、家族が再構築できるよう、そして人生で起きるどんなことも楽しめる豊かな心を持ち続けていきたいと思います。

社会で薬物の供給がある以上、末端消費者はなくならず司法で罰して社会から排除、というスタンスがまだ残っているような気がします。

家族がこの問題を経験してみて、当事者も家族も被害者なのでは?と感じるようになりました。

依存は罰するより医療が必要という観点を広めて、支援していただける方が増え続ける事を願ってやみません。

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